右の建物が本旅館。近くには、夕日ヶ浦のオブジェがある
京都府北部、日本海沿いの夕日ヶ浦海岸に面して建つ築32年の旅館。その名の通り、夕日が美しい海沿いの温泉地で、夏は海水浴に、冬は雪景色と名物のカニを求めて、多くの観光客が訪れます。旅館内は時代を感じさせる設備・内装で、客室も手狭に感じるといった課題から、全面改装を希望されていました。そこで、「付加価値のある高級志向な旅館にすることでお客様の単価を上げる」というご提案をし、観光庁による観光地の再生・サービスの高付加価値化事業の補助金を伴う計画として進行。庭を設ける、お風呂のある客室を設ける、トータルコーディネートをする、の3つをテーマに全面リフォームを行いました。お客様にワンランク上の心地良さを感じていただくとともに、美しい海と夕日を背景に、写真に残したくなる旅館へと生まれ変わりました。
玄関前の駐車場を隣地に移動し、アプローチと庭に変更。心を癒してくれる緑と上品な石畳が玄関へと誘う、ゆとりを感じさせる外観を意識しました。外壁と玄関扉には格子を取付け、旅館玄関の格式を高めるプランニングとしています。玄関を入ると、海・夕日・風を表現した左官壁がお出迎え。玄関位置を変えることでロビーを広く取り、お客様のくつろぎの場も確保しました。
既存の駐車場を撤去。前庭を設けることで、柔らかな印象のアプローチに
正面玄関の扉と壁に格子を取付け、ロゴを記したのれんをアクセントに
広々とした玄関・フロント。床はスリッパを使わない畳に
海・夕 日・風を表現した左官壁と格子が美しく調和
大きな開口から、前庭を眺めながらくつろげるロビー。冬場には、エタノールストーブの炎がやさしく揺らめく
「付加価値のある高級志向な旅館」に相応しい空間となるよう、1階の共用スペースも大幅に見直しました。和式の畳敷きとなっていた食事処や和式タイプのトイレなどを、お客様がより使いやすい快適なスタイルに変更。2つある大浴場は1つを改装し、階段にはアートを飾ったり照明を工夫したりすることで、明るい印象を生み出しています。
食事処には構造を兼ねた柱と鴨居を設け、障子で間仕切れるよう工夫。やさしい照明がくつろぎの時間を演出する
トイレ
段差を解消し、洋式トイレに。波を表現したタイルを配し、木製のサインを作成
600角タイルと木目天井を用いることで、海を一望できる露天風呂の印象も一新
階段の大きな壁には、波をイメージした造作のアートと照明を
客室を9部屋から6部屋に減らし、各室にゆとりと高級感が生まれるよう設計。その内の4部屋には客室風呂を設けることで、お客様の満足度をさらに高めました。景色を取り込む部屋、畳にマットレスとクッションを配し落ち着く部屋など、6部屋それぞれ個性あふれる空間を演出しています。さらに、家具・アート・のれん・サイン・座布団・ベッドスロー・羽織などのインテリアや装飾品も制作することで、旅館全体としてのブランディングを確立しました。
床の間を設け、質感のある壁材にアートを飾ることで大人な雰囲気を演出
障子は1枚で引込み、寝室の天井は低くすることで落ち着く空間に
畳にマットレスとクッションを配置。額縁のような窓からは海が見渡せる
客室風呂は、十和田石タイプと御影石タイプの2つをご用意
ベッドスローや羽織など、小物やインテリアもトータルコーディネート
用途 | 旅館 |
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築年 | 1991年11月 |
地域 | 京都府 |
工事概要 | リフォーム(建物の約7割の範囲をリフォーム) |
工期 | 5カ月 |
延床/リフォーム面積 | 695㎡/482㎡ |
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構造規模 | 木造2階建 |
地域区分 | 無指定 |
工事費 | 約1億8,000万円 |
設計・施工 | 積水ハウス建設関西株式会社 |
1・2階平面図
1・2階平面図